<コラム>日中のベテラン語り手が子どもたちを魅了、上海での上演会で感じた「今だからこそ大切にしたいもの」

小坂 剛    2017年6月9日(金) 23時0分

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3日、上海浦東の国際幼稚園のホールで皮影絵と紙芝居の特別上演会が開かれた。写真は筆者提供。

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2017年6月3日、上海浦東の国際幼稚園のホールで皮影絵と紙芝居の特別上演会が開かれた。皮影絵とは中国伝統の影絵による劇の事で、1200年の歴史を持つ色彩豊たかな影絵劇である。一方、昭和初期からテレビがお茶の間に普及するころまで子どもたちの娯楽であった紙芝居。日中を代表するこれらの公演を行ったのは、いずれも齢80に近いベテランの二人だ。

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このイベントは、上海で暮らす日中の子どもたちに向けて児童書籍を開放し、定期的にお話会などのイベントを行う上海虹文庫が主催。移転にともなうプレオープンを記念し、皮影絵と紙芝居の日中両国の伝統芸能の公演を行った。

皮影絵の演者は旧王家影絵劇団の六代目継承人である路連達(ルー・リエンダー)氏(78歳)、紙芝居の語り手は日本国内外で活躍する第一人者・野間成之氏(76歳)だ。

公演時間が近づくと、この日の公演を待ち望んでいた日中の子どもたちを中心とする100名強の観客で席が埋まった。テレビ・携帯に慣れている現代の子どもたちが、「アナログ」な娯楽である紙芝居にどのように反応するか、興味深い。しかし、その心配も杞憂(きゆう)であった。

野間氏は紙芝居の語りを始めると「のまりん」と言う愛称に変わる。それとともに、元気いっぱいの子どものような語り口で、子どもはもちろん、大人をもあっという間に引き込み、客席一体型のショーを展開した。話の合間に入る、かけあいに子どもたちはすぐに釘付けとなった。紙芝居の題目は「このひもなんだ?」「まんまるまんまのたんたかたん」など。毎年250を超える公演を行う紙芝居マスターの前に楽しい時間はあっという間に過ぎた。

つづいて、路氏の皮影絵。演目は「獅子舞」「金の斧銀の斧」「鶴と亀」。まずはスクリーンに投射された5匹の獅子。春節(旧正月)などには、必ず皮影絵の演者が町に集まり、お祝いムードを高めたというが、そのような町の活気までもが再現されたようだった。

「金の斧と銀の斧」は日本でもおなじみだが、湖が川に代わっていたり、女神が老人の仙人に代わっていたりと若干の違いも面白かった。「鶴と亀」は影絵の世界で古くから演じられてきた縁起物のようで、かつ、ユーモラスな無声映画のようである。中国の60から70年代のアニメーション映画はこれらの作品が原型になっていると感じる。伝統楽器によるBGMも素晴らしかった。近年の中国では中々耳にする事が無くなっただけに非常に新鮮だった。

皮影絵のスタッフには日本人もいて、すでに9年も舞台に立っているという。紙芝居や皮影絵。昔は町の中のひとつの景色として見えていたものだが、最近ではなかなか目にすることがない。電子書籍が流行る昨今、紙に印刷された本のあたたかさや、人が語る物語のぬくもりは日中共通して大切にしていかなければならない伝統文化の一つだろう。

■筆者プロフィール:小坂剛

1978年生まれ。東京大学大学院博士課程満期修了。専門は中国民間信仰と社会変動。子どものころから中国の歴史に興味を持ち、大学院まで専攻は中国地域文化研究。大学院修了後は高校社会科教師として勤務。上海に新設校が開校された際、上海に移り、現在はインターナショナルスクールにて様々な国の子どもたちに接し海外の教育を学びながら、文化交流活動などをプロデュースしている。趣味は陳氏太極拳。

■筆者プロフィール:小坂 剛

1978年生まれ。東京大学大学院博士課程満期修了。専門は中国民間信仰と社会変動。子どものころから中国の歴史に興味を持ち、大学院まで専攻は中国地域文化研究。大学院修了後は高校社会科教師として勤務。上海に新設校が開校された際、上海に移り、現在はインターナショナルスクールにて様々な国の子どもたちに接し海外の教育を学びながら、文化交流活動などをプロデュースしている。趣味は陳氏太極拳。

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