日米2国間主義に偏せず、“不即不離”貫け=通貨経済交渉はG7基軸で―内海孚・元財務官

八牧浩行    2017年3月8日(水) 9時30分

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内海孚・元財務官(慶応大名誉教授)が日本記者クラブで会見し、「トランプ大統領は(他国との)協力や調整を軽視している」と指摘。「日本は2国間主義に偏せず、G7や国際社会への配慮が必要だ。米国に親しくなりすぎず、“不即不離”の関係を築くべきだ」と語った。

2017年2月24日、1990年代の日米経済交渉などで活躍した内海孚・元財務官(慶応大名誉教授)が日本記者クラブで会見し、「トランプ米大統領のチームは(他国との)協力や調整を軽視している」と指摘。日本の米国への対応について「バイラテラリズム(2国間主義)に偏せず、G7(主要7カ国)や国際社会への配慮が必要だ。米国に親しくなりすぎず、“不即不離”の関係を築くべきだ」と語った。

内海氏は米国がドル高是正や市場開放を迫った1980年代から90年代にかけて駐米公使、国際金融局長、財務官として重要交渉を担った。今、トランプ米大統領は対米貿易黒字をやり玉に挙げ、安倍晋三政権は通商や為替での対日要求に直面している。2月の首脳会談では日米経済対話の新設で合意したが、内海氏は「米国とのバイラテラリズム(2国間主義)に偏しないことが大事だ」と警鐘を鳴らした。発言要旨は次の通り。

麻生太郎副総理とペンス副大統領をトップに発足する日米経済対話はバイラテラリズム(2国間主義)ではなく、国際社会の中でやって行く配慮が必要だ。私は財務官としてトランプ米大統領蔵相の下で対米通貨交渉などに携わった経験からすると、多角的な視点を持つことが望ましい。橋本氏は通産相時代の日米部品交渉でも詳細にEU(欧州連合)に交渉の経緯を報告し、EUから米国をけん制してもらって日本として助かった経緯がある。通貨経済交渉はあくまでもG7を基軸にすべきだ。

特に財政・金融政策は2国間で協議するものではなく、主要7カ国(G7)などを中心に進めていくことが本来の姿である。何事も「不即不離」の精神で適度な距離を保ちながら付き合っていくことが必要だ。

(日米首脳会談に先立ちトランプ大統領は「中国や日本が市場で何年も通貨安誘導を繰り広げ、米国はばかをみている」と発言したが)口先介入する米政府は具体的にマーケットを動かすような手段を持っていない。円高カードをちらつかせば日本に影響を及ぼせることを認識している米国に対し、大騒ぎせず冷静な態度で応じるべきだ。

トランプ大統領のチームは他国との協力や調整を無視している。欧州諸国は日米首脳会談と日米経済対話に対し、冷めた見方をしている。例えば大陸のメディアの報道ぶりは、「媚びへつらうことを教えてくれた」「他の国とは対照的で日本は気前のいい贈り物をした」などきわめて厳しい。

日本の場合、貿易収支よりも経常収支の方が市場に影響を与える。企業は円安になったから価格を下げて輸出を増やそうと言う戦略ではなく、利益を上げようという傾向が強い。この結果あまり黒字が増えず、企業の利益が大きかったので株高になった。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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