<コラム>韓国人がひとり飲み?衝撃的な変化に、ただただ驚いた

北岡 裕    2017年1月19日(木) 14時40分

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周りの目が気になりひとりで食事をすることが出来ないと言っていた韓国人がひとり酒を飲み、そのことを認め回答し、そのトップの理由が「気楽に飲める」だったことにただ驚いた。写真は韓国料理。

韓国の新聞、中央日報の記事に驚いた。記事によると、食品医薬品安全処が20〜30代の男女2000人を対象に昨年11月に行った「2016年下半期酒類消費・摂取調査」の結果を12月23日に発表。「20〜30代の66.1%は最近6カ月間に1人で酒を飲んだ経験があると答えたという。「1人酒」をする理由は「気楽に飲める」(62.6%)が最も多く、「ストレス解消」(17.6%)、「一緒に飲む人がいない」(7.7%)、「費用を減らすため」(5.2%)などの順だった。

もう15年以上前。当時留学していた学校の正門前の食堂で、私はひとり昼食を食べていた。以前から視線は感じていたが、ついにある日、女主人が憤然と私の前に立ち「日本の学生さん!いっつもひとりだけれど友達はいないの!?」と叫んだ。ひとりで食べているのは私だけ。おののく私に女主人は「今日から私を韓国の母と思いなさい!」といい放ち、隣の席にどんと座るとスプーンを取り上げ、チゲを無理やり食べさせる暴挙に出たのだった。

それから数年後。新宿で韓国人留学生とご飯を食べた。彼女は日本に来てわずか半年余り。しかし日本語は実に流暢で、話をしながら彼女が韓国人であることを時々忘れた。「ひとつだけ、出来ないことがあるの」。なに?と聞くと声を潜めていう。「ひとりで学食や外でご飯を食べること」。「好きなものを食べられていいじゃない?」というと彼女はしかめっ面をして見せ「絶対ムリ!周りからどう見られるかと思うと耐えられないの」と言ったのだった。

ひとりが好きな私には韓国での生活は少し窮屈だった。「寂しくないの」「いっしょに食べようよ」。ひとり旅の途中やひとりで食事をしていてこう話しかけられたのは一度や二度ではない。まれに街でひとり酒をしている人の姿を見たことがあるが、アルコール中毒の雰囲気をまとった者か、人目も憚らず泣いていたり、目が据わっていたり明らかに非常時の雰囲気があった。

食事と酒の違いはあるが、周りの目が気になりひとりで食事をすることが出来ないと言っていた韓国人がひとり酒を飲み、そのことを認め回答し、そのトップの理由が「気楽に飲める」だったことにただ驚いた。

15年以上前、韓国人に感じた底抜けの温かさと孤独へのもろさ。おせっかいな食堂の女主人や韓国人留学生の彼女は、今どうしているのだろう。すっかり没交渉になってしまった人たちの顔を久しぶりに思い出した。

【著者のひとりごと】

東京も寒いですが、この時期のソウルの寒さは相当です。飲んで屋外で眠ると凍死の可能性も。ひとり酒はその意味でも危険です。

■筆者プロフィール:北岡裕

76年生まれ。東京在住。過去5回の訪朝経験を持つ。主な著作に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」。コラムを多数執筆しており、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」では異例の日本人の連載で話題を呼ぶ。講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。

■筆者プロフィール:北岡 裕

1976年生まれ、現在東京在住。韓国留学後、2004、10、13、15、16年と訪朝。一般財団法人霞山会HPと広報誌「Think Asia」、週刊誌週刊金曜日、SPA!などにコラムを多数執筆。朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」でコラム「Strangers in Pyongyang」を連載。異例の日本人の連載は在日朝鮮人社会でも笑いと話題を呼ぶ。一般社団法人「内外情勢調査会」での講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。過去5回の訪朝経験と北朝鮮音楽への関心を軸に、現地の人との会話や笑えるエピソードを中心に今までとは違う北朝鮮像を伝えることに日々奮闘している。著書に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書店・共著)。

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