<コラム>日中友好に貢献する「字幕組」に感謝しよう!

荒木 利博    2017年1月14日(土) 9時30分

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日本で今話題の「君の名は。」が、中国でも大ヒット中である。こういうニュースは素直にうれしい。資料写真。

日本で今話題の「君の名は。」が、中国でも大ヒット中である。こういうニュースは素直にうれしい。

この映画が日本で話題になり始めたとき、筆者の第一の関心は、中国でいつ海賊版DVDが出るか、ということだった。そして案の定、人気映画なるがゆえに、異例の速さで市場に出回った。それでも「君の名は。」を劇場で見る人が多いのは、よほど中国人の心を掴んだのだろう。

中国人も中国に住む数多くの外国人も、そのほとんどが違法と知りつつ海賊版DVDや無料動画ダウンロードサイトの世話になっている。特に日本人にとっては、最新のバラエティー番組から人気ドラマ、そして紅白歌合戦までも見ることができる。日本のNHKや民放は、ケーブルやネットで見ることもできるが、やはり1枚10元〜20元(約160円〜320円)のDVDや無料ダウンロードはありがたい。

ところで、海賊版の違法性がどうたらこうたらは、本日のメインテーマではない。筆者が今回取り上げたかったのは、海賊版の日中友好に対する大きな貢献についてである。

タイトルにある「字幕組」とは、海外のドラマやアニメを翻訳して中国語の字幕を付けてくれる、外国語が達者な人たちのボランティアグループである。彼らが翻訳してくれなければ、海賊版娯楽メディアはここまで普及しなかったかも知れない。プロの翻訳ではないので苦笑するほどの“迷訳”も多いが、それを補って余りある貢献であることに変わりはない。

中国では、古くは「おしん」に始まり、「山口百恵」「高倉健」、続いて「ドラえもん」「コナン」などが日本への入り口だった。中国の日本語学習熱の発火点はここにあり、ついに中国は100万人を優に超す、世界一の日本語学習者を有するまでになった。これも字幕組の献身的努力あってこそ、である。

訪日が今ほど簡単でなかった頃は、唯一庶民が楽しめたのが日本の娯楽メディアを通しての「バーチャル訪日」だった。今も、日本に行くことができない学生や若い世代にとって、ネットで楽しむ日本のACG(Anime、Comic、Game)は、日本を疑似体験できる貴重なツールなのである。違法コピーの廃絶は必要だが、ここはひとつ日中友好のために片眼をつぶり、時間をかけてソフトランディングさせて欲しいものだ。

中国政府の対日強硬路線は相変わらずだが、人民は急速に親日化しているように見える。年間500万人を超える中国人が来日し、彼らの大多数が、親日あるいは知日となって祖国に帰り、哈日(ハーリー/親日の意)の輪を広げてくれることを大いに期待している。

■筆者プロフィール:荒木利博

アメリカで学位取得後、アメリカとドイツの駐在勤務を経て、1996年から2015年まで中国に滞在、合わせて四半世紀以上を海外で暮らす。プライベートでは、60代半ばになるまで中国のアウトドアライフを謳歌した。2016年初頭より東京のリロケーション関連企業に勤務している。

■筆者プロフィール:荒木 利博

昭和24年に生まれ、現在都内在住。米東部州立大学卒業後、アメリカとドイツの駐在を経て、1996年から2015年まで中国に滞在、合わせて四半世紀を海外で暮らす。中国では香港の大手ディベロッパーのKerry(嘉里)やShui On(瑞安)に籍を置き、大連、北京、上海で大規模不動産開発に参加。プライベートでは、中国各地をパラグライダーで飛んだり、無免許でハーレーを乗り回したり、大連湾でカヤックを漕いだりと、60代半ばになるまで中国のアウトドアライフを謳歌した。2016年初頭より東京で外国人向け総合不動産サービスを提供している。地球の暮らし方(ダイアモンド社)2005年上海版編集協力した実績を持つ。

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