<直言!日本と世界の未来>日本の国際競争力回復の鍵とは?=中国人の高い学習意欲に驚く―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2016年12月31日(土) 14時30分

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世界経済フォーラム(WEF)の2016年国際競争力ランキングによると、スイスが8年連続で首位を維持した。日本は前年の6位から8位に後退した。2位はシンガポール、3位は米国で昨年と同様だった。中国は28位と順位を上げた。写真は筆者。

世界経済フォーラム(WEF)の2016年国際競争力ランキングによると、スイスが8年連続で首位を維持した。日本は前年の6位から8位に後退した。2位はシンガポール、3位は米国で昨年と同様だった。中国は28位と順位を上げた。このランキングは、社会制度、インフラ、保健と教育 市場規模、マクロ経済環境などの評価とともに、政府の効率性や透明性についての経営者の調査結果を指数化し、算定している。

WEFは貿易の障壁が大きくなっていることが各国の将来的な成長力や技術革新に対するリスクとなっていると警告。また、先進国における量的緩和などの金融政策は長期的な成長を促すのには不十分であることが明らかになってきたとの見解を示している。

この種のランキングでは、日本もかつては米国と並んでトップクラスを誇っていたが、1997年以降は順位を落としている。その一方で、中国とインドが順位を上げ、新興市場の追い上げが激しい。

私は毎年、中国の大学で講演を行ってきたが、いつも印象深く感じるのは、中国人の高い学習意欲と教育に対する情熱である。最近の中国の大学は、国家の発展に向け、研究・教育体制の充実はもちろん、国内外を問わず産業界との連携とベンチャー企業の育成に大変積極的だ。こうした環境の中、中国では優秀な人材が多数輩出され、中国における高等教育機関の在学者数は、驚異的なペースで増加、2000万人以上に達している。

一方、日本の在学者数は約300万人程度で、絶対数で圧倒的に中国が勝っている。しかも日本は少子化のため18歳人口が激減しており、在学者が今後さらに減少していくのは確実である。

我々は、中国で今後ますます増加する高度な知的労働力こそ、中国の本当の強さであることを認識すべきである。日本企業は中国のこうした知的人材の存在を十分念頭に置きながら、中国との新たな関係を築いていく必要がある。絶対数で中国の足元にも及ばない日本がグローバル競争に臨むには、生産性を高め、高付加価値化で勝負するしかない。日本が国際競争力を維持していくには、日本でしか作れないモノや領域を常に開拓する必要がある。そして、技術的に絶えず世界で先行することが大切である。

情報家電、燃料電池、AI(人工知能ロボット、ソフトコンテンツなどを日本が世界に誇れる先端的産業群として強化すべきだ。ナノテク、バイオ、IT(情報技術)、環境などの技術革新は日本の強みである。今後の課題は、日本の優位な技術分野を戦略的に拡充し、日本発のグローバルビジネスモデルとして早期に育て上げていくことだ。

その戦略のコアになるのが「人材」であり、人材をつくり、育てるのが「教育」だ。国際競争力の基盤をつくる「教育」への情熱こそが、日本が競争力を回復する鍵である。日本も産官学連携の下、国家レベルで人学改革や人材育成を進めなければ、中国に後れを取ることは確実だ。国も企業も「人づくり」を急がねばならない時期に来ている。

立石信雄(たていし・のぶお)

1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)「The Taylor Key Award」受賞。同志社大学名誉文化博士。中国・南開大学、中山大学復旦大学上海交通大学各顧問教授、北京大学日本研究センター、華南大学日本研究所各顧問。中国の20以上の国家重点大学で講演している。

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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