米国はTPP離脱、日本ができるのは「最後の抵抗」を試みること―中国専門家

人民網日本語版    2016年12月2日(金) 5時10分

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米国で次期大統領に決まったドナルド・トランプ氏の態度表明により、米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱することがほぼ確実になった。これについて、日本の安部晋三首相は極力冷静さを保ちながらも、他の加盟10カ国に対しTPPの批准を呼びかけた。

米国で次期大統領に決まったドナルド・トランプ氏の態度表明により、米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱することがほぼ確実になった。これについて、日本の安倍晋三首相は極力冷静さを保ち、21日にアルゼンチンを訪問した際の記者会見では、「米国抜きのTPPでは意味がない」と述べながらも、他の加盟10カ国に対しTPPの批准を呼びかけた。「国際商報」が伝えた。

安倍首相がTPPの継承者になり、米国からバトンを引き継ごうとしているのは明らかだ。今月10日には日本の衆院本会議がTPP法案を可決した。だが日本の思い通りになるだろうか。

▽日本はTPPに大きな期待

安倍首相にとって、TPPはその政治的キャリアにおける力強さの象徴だ。中国現代国際関係研究院日本研究所の劉雲・副研究員は、「現実主義の政治家として、安倍首相の就任以降のいくつかの戦略的選択にはこの現実主義の側面が目立ち、戦略の中心を米国に移し、米国の『アジア回帰』戦略を支持したことや、日米同盟を戦略的にバージョンアップさせ、日本全体の国家戦略の重点をTPPと対米外交に置いたことが含まれる。だが安倍首相が思いもしなかったことが起き、トランプが当選して計画を粉々にした。経済の面では、TPPはアベノミクスの第2の矢の主要目標であり、非常に重要なものだ」と説明する。

劉副研究員はさらに掘り下げて、「アベノミクスは初めは主に金融政策の量的緩和によって経済を推進し、次は構造改革に向き合ってより大きな成功を獲得することを目指した。日本は人口が高齢化する困難な現実の中で、国内の改革だけに頼って経済成長を実現することは難しい。そこで、安倍首相は国際化の道を歩むことを考え、TPPという戦略を通じて米国をASEAN市場に引き入れると同時に、中国をTPPから排除し、ASEAN市場における中国の優位性を最大限に弱めようとし、ひいては日米両国が東南アジア市場のメリットを安定的に享受し、労働力という製造業の基盤のメリットを享受することを目指した。これは日本にとっては経済的意義のあることで、政治的な安全保障という意義もあった。言い換えれば、安倍首相は『退路を断って』TPPを重要な戦略的位置に置いたのだ」と続ける。

こうした状況の中、勝利を収めたトランプ氏は今後のTPP推進の可能性を公開の場で否定し、安倍首相にとって大きなマイナスとなった。劉副研究員は、「これは安倍首相の戦略全体が全面的に崩壊したことと同じであり、経済戦略も外交政策も含まれる。日本はアジアの、さらには世界の中の重要なエコノミーだが、小国であり、政治や経済では東西間をうまく立ち回らなければならない。日本にはそれほどたくさんの手があるわけではないので、TPPという概念を強調しなければならない。たとえ米国抜きでも、結果が出せなかったとしても、歩き続けるしかないのだ」と強調する。

ニッポンニュースネットワーク(NNN)の報道によると、安倍首相は参院のTPP特別委員会で野党議員の「猛攻撃」を受けたという。劉副研究員は、「安倍首相は委員会で、トランプ氏がTPP離脱の方針を転換するかどうか『確信はない』と述べ、米国がアジア回帰戦略を本当にやめるかどうかは予測できないとしたが、日本がTPP法案の早期批准を推進する立場は変わらず、引き続き米国に説得を試みると述べた。その理由として、『トランプ氏との会談で築いた信頼関係には変わりがない』ことを挙げた」と指摘する。

▽一国でTPPを支えるのは困難

劉副研究員は、「TPPにとって、日本の役割は小さく、核心はやはり米国国内の政策的支持や各政党の態度、特にトランプ氏の態度だ。日本ができる最大のことはTPPの推進に努力すること、最後の抵抗を試みることだ」との見方を示す。

シンガポール大華銀行の全徳健シニアエコノミストは取材に答える中で、「米国が本当にTPPから離脱すれば、日本は加盟国の中では米国に次ぐ最大のエコノミーになるが、日本には米国に代わるだけの十分な力がないことはしっかり認識しなくてはならない。日本と米国を権威や推進効果の面で同日に論じることはできず、単に数字だけを見ても日本が米国の代わりになれないことは誰でも分かる。TPP加盟国の国内総生産(GDP)は世界の約37%を占めるが、米国が約23%を占めており、日本はわずか6%だ。米国を除く加盟国全体では14%にとどまり、TPPは影響力も地域で発揮できる役割も大いに割り引きされることになる」と述べた。

また全氏は、「TPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の最終的な目標はいずれもアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築だ。TPPに比べ、RCEP加盟国の2015年の総生産額は22兆4千億ドル(約2525兆3760億円)に達し、世界全体の30.6%を占める。同じ目標の下、米国抜きのTPPに競争力がないのは明らかだ」と述べた。

こうした状況の中、劉副研究員は、「日本には今、いくつかの可能な『撤退の道』がある」とした上で、「1つは、日本がさきにRCEPを主導したいと述べたことで、TPPに望みがないことを前提として、もう一度こうした意志を示すという道だ。だが注意しなくてはならないのは、RCEPはASEANが主導しているということ、また日本が意志を示した際には本当にRCEPを推進するつもりはなく、RCEPを米国との交渉の材料にしていたことだ。もう1つの退路は、トランプ氏の貿易政策は主に二国間のFTA交渉を重視しており、日米間の二国間貿易交渉は1950〜60年代から続いているので、安倍首相が米国の求めに応じて、二国間交渉に回帰し、形を変えたTPPの支援を行うことだ。つまり、二国間FTA交渉の過程で、一定の譲歩を行うことで米国を再びTPPの枠組みまたはTPPのような枠組みに引き戻すということだ」との見方を示した。(提供/人民網日本語版・編集KS)

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