「米国第一」掲げるトランプ政権、中国と経済で取引か?南シナ海・人権問題には無関心=ロシア・北朝鮮との関係修復も―東京財団上席研究員

八牧浩行    2016年11月17日(木) 5時10分

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14日、米国の政治事情に詳しい渡部恒雄東京財団上席研究員が講演。「米国第一。強い経済を取り戻す」を公約に掲げたトランプ氏は、大きな経済市場の中国と取引ができると考えているかもしれないと指摘。トランプ政権がロシアや北朝鮮との関係修復に動く可能性も示唆した。

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2016年11月14日、米国の政治事情に詳しい渡部恒雄東京財団上席研究員が日本記者クラブで講演。「アメリカ第一。強い経済を取り戻す」を公約に掲げたトランプ氏は、大きな経済市場の中国と取引ができると考えているかもしれないと指摘した。大統領選挙中に、「中国の為替操作国指定」など対中強硬策を表明したことについて、(取引の中で)問題はなかったことにする可能性があるとの見解を示した。またトランプ政権がロシア北朝鮮との関係修復に動く可能性も示唆した。発言要旨は次の通り。

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民主党のクリントンの対抗馬で民主社会主義者を自称するサンダ−スの人気が事前の予想を覆し、善戦した。これは米国民が貧富の差が拡大していることへの不満の反映だ。この層は変化をきたししており、共和党のトランプ氏支持とも共通している。

米国の歴史の中で、トランプのようなワシントン政治のアウトサイダーが大統領になることは皆無ではない。第7代大統領ジャクソン(1829〜1837年)で、富裕層以外の初の大統領で、白人男性による普通選挙制を実現。その政策は、インディアンの強制移住、黒人への差別、州権の重視と小さな政府、猟官制の導入などの保守的な政策が特徴だった。

下馬評を覆してトランプ氏が当選したが、米国は大きく動揺している。これまで保守とリベラルの二つに分断した亀裂を、さらに深めかねないことへのリベラル及び中道からの懸念が反映している。

ロシアのプーチン大統領は、トランプ候補の勝利後、米露関係を危機的な状況から抜け出させ、国際的な課題の解決につながるような相互協力を望むとし、平等や互いへの尊敬の念などに基づく米露間の建設的な対話の構築が米露両国と国際社会の利益にかなうとして、祝福の言葉を送った。

オバマ政権は「戦略的忍耐」として、北朝鮮政策を何もしなかった。北朝鮮が核開発を発展させる中、何かしらの政策を取らざるを得ない状況となる。トランプ氏は、北朝鮮の金正恩との面会に意欲を示し、「会うことに何の問題もない」と発言している。

「強い米国経済を取り戻す」ことを優先課題とするトランプ氏は、(大きなマーケットを持つ経済大国の)中国とは取引ができると考えているかもしれない。大統領選挙中に、「中国を為替操作国に指定する」など対中強硬策を表明したが、(取引の中で)問題はなかったことにするかもしれない。南シナ海問題や人権問題にはあまり関心がないだろう。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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