<コラム>「日本人は中秋の名月にうどんを食べます!」=中国学生の“怪情報”に耳を疑った

浦上 早苗    2016年9月15日(木) 18時30分

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9月15日、中国は「中秋節」の祝日で、今年は15日から17日までが三連休となる。写真は中国のスーパーの月餅コーナー。筆者撮影。

9月15日、中国は「中秋節」の祝日で、今年は15日から17日までが三連休となる(その代わり18日の日曜日は“振替平日”になる)。

中国は中秋節に月餅を贈りあう習慣があり、9月に入るとスーパー、デパート、ホテルには月餅コーナーが設置され、様々な月餅が並ぶ。最近はスターバックスや欧米のパン屋もコーヒー味やイチゴ味の月餅セットを販売しており、日本人から見ると、「月餅しか贈れないお歳暮」、或いは「義理だけど金がやたらにかかるバレンタインデー」のようなイメージだ。

月餅は贈答品なので、決して安くない。例えば今年のスターバックスの6個入りは価格が300元(1元=約15円)を超える。スーパーで箱に入っていないばら売りを買っても、1個10元はする。小さな食堂で、丼や麺が7、8元で食べられることを考えると、強気もいいところだ。

中身に比べて豪華すぎる包装も、中秋節の月餅の特徴である。包装コストは1億元に達するとの試算もあり、月餅は中国の資源浪費やメンツ文化の象徴的存在でもある。

一方、日本の中秋の名月は、中国ほど存在感がない。観月会が催されたり、スーパーに団子が並んだりするが、何といっても平日なので、気づかないまま終わってしまうことも多い。私自身、特別なことをした経験もなく、世間がどのようにこの日を過ごしているかよくわからない。

数年前、勤務先の中国の大学の講義で、「日本の年中行事」をテーマに、学生にグループ発表をしてもらった。日中両国に存在する行事はとっつきやすいのか、「七夕」「正月」と同様、「中秋の名月」も複数のグループが取り上げた。

発表当日、最初のグループが「日本は中秋の名月の日に、お月見をします。月を見ながら団子を食べます」とスライドを使いながら説明し始めた。ふんふんと聞いていたら、次に「そしてうどんも欠かせません」と続いた。

うどん?は初耳である。どこかの地方限定の風習なのか?疑問に思いつつも聞き流していたら次のグループも「中秋の名月にはうどんを食べます」と言う。

さすがに「ちょっと待って」と止めた。

「私、そんな話初めて聞いたけど」

「インターネットに、中秋の名月専用のうどんがあると書いてありました」

「団子じゃなくて?」

「団子とうどんを食べます」

そう言って学生が私に見せた写真は、月見うどんだった。

「いや、それは卵が月に似ているからその名前が付いただけで、一年中食べられるから」

「でも、インターネットに書いてあります」

「中国のネットに書いてあることと、日本人の私が言っていることのどっちを信じるわけ?」

年中行事の発表ではほかにも、「日本は70歳以上の全員に毎年祝い金をあげる」(敬老の日)「日本の三大弁当は“幼稚園の弁当”“花見の弁当”“運動会の弁当”だ」(体育の日)など、インターネットに書いてあることをそのまま引用したと思われる“怪情報”が続出し、ネットで何でも調べられる便利さと、その危うさを痛感した。

かく言う私も、学生が「中秋の名月にはうどんを食べます」と断言した時に、「そんな地方があるのかもしれないな」と思ってしまい、日本の伝統行事に対する理解の少なさを恥じたのだった。

■筆者プロフィール:浦上早苗

大卒後、地方新聞社に12年半勤務。国費留学生として中国・大連に留学し、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のメディア・ニュース翻訳に従事。日本人役としての映画出演やマナー講師の経験も持つ。

■筆者プロフィール:浦上 早苗

1974年生まれ、福岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業、九州大学大学院経済学府修了。大卒後、地方新聞社に12年半勤務。その後息子を連れ、国費留学生として大連に博士課程留学…するも、修了の見通しが立たず、少数民族中心の大学で日本語講師に。並行して、中国語、英語のニュース翻訳に従事。頼まれて映画に日本人役として出たり、マナー講師をしてみたり、中国人社会の中で、「日本人ならできるだろ」という無茶な依頼に、怒ったりあきれたりしながら付き合っています。マスコミ業界の片隅に身を置いている経験から、日米中のマスから見た中国社会と、私の小さな目から見たそれの違いを少しでもお伝えできれば幸いです。

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