日中関係は改善傾向、政治的相互信頼は依然脆弱―中国青書

人民網日本語版    2016年6月2日(木) 17時0分

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中華日本学会、中国社会科学院日本研究所、社会科学文献出版社は5月31日、「日本青書:日本研究報告(2016)」を北京で共同発表した。

中華日本学会、中国社会科学院日本研究所、社会科学文献出版社は5月31日、「日本青書:日本研究報告(2016)」を北京で共同発表した。青書は次のように指摘した。

2015年、日本経済の成長は期待を下回り、アベノミクスに対する疑問の声が日増しに高まっている。安倍内閣は新安保法を強引に推し進めた後、アベノミクスの「第三の矢」も発表した。安倍内閣は社会・経済発展戦略「一億総活躍」を打ち出したが、日本の政治、安全、社会、経済に対する国民の不安感を取り除くのは依然困難だ。

2015年、中日関係は改善基調を維持し、「低調変動」の特徴を呈した。上層部は対話を保ち、各界の交流は徐々に回復した。だが依然として歴史認識、領土、東中国海の海洋権益をめぐる紛争など両国間には障害が存在し、政治的相互信頼は脆弱で、関係改善の基礎は不安定だ。

2016年を展望すると、日本の内政と外交は参院選の影響を直接的に受ける。安倍首相は東シナ海と南シナ海の問題で対中強硬姿勢を継続する可能性が高い。同時に、対中経済協力の回復と強化を求める圧力も一層高まる。世界経済が互いに融合する中、各国・地域の経済成長への外部環境の影響は強まっている。全体的に見て、低失業、低インフレ、低成長が日本経済の今後の常態となる。

■2016年、安倍首相は東シナ海と南シナ海の問題で対中強硬姿勢を継続

2015年に安倍内閣が新安保法の国会での可決を強行に推し進めたことで、日本の安全保障・防衛政策は「平和憲法」の制約を大幅に突破し、第2次大戦後最大の変質を遂げた。自衛隊の海外出兵の敷居は低くなり、海外での武力行使の危険性が高まった。

2015年は日本の敗戦・降伏70周年だった。歴史観を広く問題視される安倍内閣は国際的圧力を解消するため、自ら外交攻勢をかけて、平穏に関門を乗り切ろうとした。日中関係は立て直し基調を継続し、上層部は対話を保ち、各界の交流は回復した。だが依然として関係改善の基礎は不安定で、障害が存在し、地域・多国間分野で両国間の競争と対立が増加した。日本は南中国海に大仰に介入し、南西の防衛を強化した。多国間および第三国の各分野で日中間の角逐は激化した。

2016年を展望すると、日本の内政と外交は参院選の影響を直接的に受ける。安倍首相は東シナ海と南シナ海の問題で対中強硬姿勢を継続する可能性が高い。同時に、対中経済協力の回復と強化を求める圧力もさらに高まる。日中の実務協力には広大な余地がある。協力が順調に進むか否かは、両国関係全体の環境次第だ。両国が溝を有効に管理・コントロールし、「地雷原」を避け、動揺を減らし、関係を落ち着かせて実務協力を深化できるか否かは、日中関係の今後の長期的発展にとって極めて重要だ。

■中国周辺に対する新安保法の潜在的影響は軽視できない

新安保法の可決は中国の周辺情勢に大きな影響を与える。

朝鮮半島方面では、日本にとって「朝鮮半島有事」への対処は一貫して安保政策の重要な想定対象だ。現在、朝鮮半島情勢は不確定性をはらみ、動揺を引き起こす可能性もある。朝鮮半島で危機または戦争が発生した場合、日本は新安保法に基づき朝鮮半島および周辺地域で米軍または第三国に後方支援を提供することができる。さらには米国、韓国など第三国とともに集団的自衛権を行使することさえできる。台湾方面は米日同盟にとって重点的注視の対象だ。日本の国内法の観点から見ると、新安保法は台湾海峡情勢への軍事的干渉に解釈の操作余地を残した。日本側は米軍にいわゆる「後方支援」を提供できるだけでなく、拡大解釈によって台湾地区および台湾海峡情勢に一定の介入すらできる。

また、新安保法は国連平和維持活動および国連の枠組外の「国際連携平和安全」活動への自衛隊の参加制限も大幅に緩和した。こうした活動は中国周辺の潜在的紛争問題に直接的を絞ったものではないが、中国に対して重要な影響を生じうる。日米同盟が「グローバル同盟」に格上げされた後、自衛隊は戦略水路、資源生産国、地政学上重要な国を含む世界の紛争問題地域にさらに多く出現する可能性がある。しかも法的余地の拡大により、海外派遣部隊の装備水準や行動能力は大幅に高まる可能性がある。こうした中、海外における中国の政治的、経済的利益区域、軍事力活動区域は、いずれも日本側部隊の活動区域とさらに重複または交錯する恐れがある。重複はどのような影響をもたらし、交錯はどう処理するのか?これは中日関係にとって新たな問題となるだろう。

■平和主義思想は日本の主流から転落する恐れ

日本の各大手機関の世論調査では、新安保法案の支持率は最低時でも25%前後あった。また、新安保法案の国会への提出から最終的な可決までの間、安倍内閣支持率は下落したものの、最低時でも35%を保った。

その理由として、まず日本が80年代から掲げてきた「普通の国」との目標が次第に国民に受け入れられてきたことがある。新安保法反対運動において、一部の参加者が反対したのは法律そのものではなく、法律の審議過程だった。次に中国の台頭、朝鮮半島核問題、国際テロの頻発なども日本政府が脅威を誇張し続ける口実となり、新安保法案で「存立危機事態」において自衛隊を派遣する根拠となった。最後に従来型の紙媒体が新安保法について大規模な議論や報道を行なわなかったうえ、テレビ局などに対する政府のコントロールもあり、与党の主張に有利な世論空間が形成された。こうした要因の相互作用の下、2015年の反安保法闘争は一定規模にはなったものの、新安保法案の可決を阻止するにはいたらなかった。将来を展望すると、日本において平和主義思想は依然存続するが、社会の主流の思想からは次第に転落する恐れがある。

■低失業、低インフレ、低成長が日本経済の常態に

世界経済が互いに融合する中、各国・地域の経済成長への外部環境の影響は強まっている。現在、世界経済は金融危機以降最も複雑で厳しい状況にある。IMFは2015年度に世界経済の成長率予測を年初の3.8%から3.1%へと4回にわたり下方修正した。今後もいくつかのリスクが存在する。米国経済は回復の勢いが相対的に安定しているが、さらなる利上げの頻度と幅は一部のエコノミーに衝撃を与え、日本経済に不確定性をもたらす。欧州経済は回復が依然脆弱だ。中国など新興国や途上国は成長がおしなべて減速している。地政学的リスクはコモディティーおよび世界資本市場の動揺と調整を招き、日本企業の生産の海外移転も経済成長に対する輸出の牽引的役割を弱めている。

2016年を展望すると、日本は構造改革を引き続き推進するだろう。例えば法人実効税率を32.11%から29.97%へと引き下げる(2018年度に29.74%へとさらに引き下げる)。これは企業のコストを下げ、投資機会を増やし、工業・鉱業生産を促進するうえでプラスだ。輸出の外部環境は多少改善し、世界経済の成長率は2015年をやや上回るだろう。その他に、日本政府は消費を刺激し、経済成長を牽引するため、企業に再三賃上げを要請している。また、雇用状況は引き続き改善し、エネルギー価格の下落は国内の住民に実質所得の増加効果をもたらす。(提供/人民網日本語版・編集/NA)

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