Record China 2016年2月21日(日) 17時50分
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中国では年初から、習近平国家主席について「核心」と呼び始めている。写真は15年9月3日の閲兵式で、左手で敬礼する習主席。左手での敬礼は極めて非礼といわれる。この席で30万人の軍縮を表明しただけに、軍内での反発も強いと伝えられる=CCTVから筆者撮影。
中国では年初から、習近平国家主席について「核心」と呼び始めている。例えば「習近平国家主席という核心を断固支持しよう」とか、「習近平国家主席を核心とする中国共産党中央(あるいは中央軍事委員会)」というものだ。
同時に、習近平主席自身や日本の官房長官に当たる中国共産党の大番頭である栗戦書・党中央弁公庁主任も「核心意識」を強化するよう呼びかけている。これはぶっちゃけて言うと、「習氏を最高指導者として崇拝せよ」というもので、ずばり個人崇拝の強化だ。
あまりにも露骨な権力の誇示だけに、北京の著名な歴史学者である章立凡氏は「習近平に不忠な者がいることの証拠」と述べて、習氏の権力基盤はまだ固まっていないとの見方を示した。
「核心」という言葉を最初に使ったのは江沢民元主席で、「江沢民総書記を核心とする党指導部」などと使われた。これは最高指導部を構成する党政治局常務委員会でも、江氏が最高指導者であることを示す狙いがあった。
次の胡錦濤指導部では集団指導体制を採用し、胡氏は最後まで「核心」という表現を用いなかった。これは、客観的に言うと、江氏が影響力を残していたことから、胡氏は核心という言葉を使いたくても、使えなかったのだ。
しかし、習氏は江氏に倣って、核心を継承した。というのも、胡氏は引退して、表舞台に出てこなくなり、江氏もさすがに老齢になったことや、自身の腹心だった主だった幹部が軒並み、習氏の主導する反腐敗運動で逮捕されてしまったことも関係があるとみられる。
習氏は2012年11月のトップ就任から3年以上たち、党、軍、経済などで多くの分野で自身への権力集中を急いでいる。
習氏は2月1日の軍の「戦区」設立大会で「核心意識」を強化するよう命じるとともに、「手本(とする)意識」の強化も要求。「手本」の対象も習氏を指しており、今後、個人崇拝を進める構えだ。特に、軍内では30万人の軍縮や大幅な機構改革などで一部勢力の習氏への反発は強いと伝えられるだけに、戦区設立大会での習氏の発言は意味深だ。
栗戦書氏も他の会合で同様の言葉を繰り返し、「絶対に習主席に忠誠を誓おう」などと檄を飛ばしている。これに呼応するかのように、中国本土の31の省・直轄市・自治区のうち、すでに約20人のトップが習氏を「核心」として、習氏への忠誠を表明している。
これについて、章立凡氏は米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」に次のように指摘する。
「通常、政治局常務委員会で従業問題を決定する際は多数決だったが、習氏が核心となることで、習氏の権限が大きくなり、習氏が拒否権を持ち、習氏の一存ですべてが決まるという毛沢東主席並みの権力の集中を目指しているといえる。これは裏返して見れば、多数決では習氏が必ずしも優位ではない状況が現出していることであり、まだ習氏の権力基盤が盤石ではないことを示している。特に軍内ではこの傾向が強い。習氏への権限強化は強い反発があるとみられ、あまりに焦り過ぎると足元をすくわれかねないのではないか」
◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。
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