日本の若い研究者は、じっくり研究ができない=科学技術で尊敬される国を目指せ―ノーベル物理学賞の梶田教授

八牧浩行    2016年1月10日(日) 8時0分

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ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章東京大宇宙線研究所長・教授(写真左)が、日本記者クラブで質問に答えた。日本では博士課程に進んでも就職しにくく、研究者になっても任期制で短期的な成果を求められ、じっくり研究ができないと問題提起した。

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2016年1月7日、昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章東京大宇宙線研究所長・教授が、日本記者クラブで質問に答えた。日本では博士課程に進んでも就職しにくく、研究者になっても任期制で短期的な成果を求められ、じっくり研究ができないと問題提起。「日本は科学技術で、世界で尊敬される国を目指すべきだ」と訴えた。発言要旨次の通り。

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自然科学の研究はやりがいがある。子供たちが本当の科学の面白さを知る前に科学が嫌いにならないように、物理などを早い段階で知ってもらえるようしたい。本だけではなく自然を見てその不思議さを感じてほしい。理解できないことをうやむやにしない態度が大事だと思う。

「素粒子ニュートリノ」の観測データに疑問を持ち、地道に解析を進めたことがノーベル賞につながった。若い学生には研究をする人生というものを選択肢として考えてほしい

日本の現状は課題も多い。若い研究者は短期的な成果を求められる。ポストドクター(博士課程修了者)の問題(就職難)があり、博士課程に学生が来なくなっている。日本は高い授業料を学生が払わなければならないが、米国などでは給料が支給さる。海外から優秀な学生を大学院生として日本に来てもらう際に大きな壁になっている。

研究者の多くも(短期契約なので)2年ごとに成果を出さないと契約を打ち切られ、長期的な視野に立った研究ができない環境にある。能力のある人を、任期のない安定したポストに就け、じっくり研究できるようにしなければならない。

日本は科学技術で頑張って、世界で尊敬される国を目指すべきだ。自由な発想で科学的好奇心に基づいて、研究ができる風土を保つ必要がある。今、日本から海外に留学する学生も急減し、将来が懸念される。

ノーベル賞の賞金は日本の宇宙線研究を背負う若い人たちに還元したい。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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