日本僑報社 2016年1月8日(金) 6時40分
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日中関係を表す言葉として、「近くて遠い国」という表現がよく用いられるが、上海交通大学の李さんは、自身が日本に留学したときの体験から、日中は必ず「近くて近い国」になれると確信したようだ。
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さまざまな隔たりが存在する近年の日中関係を表す言葉として、「近くて遠い国」という表現がよく用いられる。しかし、上海交通大学の李一●(●=草冠に函)さんは、自身が日本に留学したときの体験から、日中は必ず「近くて近い国」になれると確信したようだ。
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この間、日本に1年間留学していたときアルバイトをしていた焼肉店の店長からメールをいただいた。そのメールを見て一瞬のうちに、アルバイトをしていた1年間のいろいろなエピソードを思い出し、私がどれだけその店での経験に影響を受けていたかを改めて感じた。
交換留学生として日本で過ごしていた時期に、アルバイトをしようと決心したのは容易なことではなかった。「日本人上司は中国人留学生をばかにしているよ。特にあんたみたいな短期留学生をね」。先輩の留学生たちから聞いた恐ろしい噂であった。しかし、寮に閉じこもってばかりいてはせっかく日本に来た意味がないと考え、私は焼肉店でアルバイトを始めた。最初はいろいろ叱られたり大変だったが、他の日本人のアルバイト仲間も私と同じように厳しく注意されているのを見て気にならなくなった。「お客様は神様だ」「元気が一番」「皆に迷惑をかけるな」などなど、仲間と一緒に叩き込まれるうちに私は日本人のまじめさに感銘を受けた。
私たち中国人も勤勉な民族かもしれないが、日本人ほど仕事に全力をかけたりしないので、中国人が同じように注意を受けたり指導をされたら、先輩たちのように「日本人は我々をばかにしている」と考えがちだ。まさにそれが原因で中国に進出している日系企業でもトラブルが起こる。しかし、実は日本人同士であっても厳しく注意したりされたりするのが普通なのである。むしろ、このような几帳面さは日本人の誇りであり、私たちは最初のうちは慣れることができなくても、その精神を理解し学んだ方がいいのかもしれない。
注意されたことを直して、また注意されるということを繰り返しながらアルバイトを続け、私はやっと一人前になり、お客さんとの会話もだんだん増えてきた。「どこから来たの?」「上海から参りました」「上海ってええ町やわ」。会話のほとんどはこれで終わってしまった。上海の名前だけを知り、それ以外何も知らないというのが大半のようであった。有名な都市でさえこうであれば、中国の他の都市はどうであろうか。もっと中国のことを日本人に知ってもらいたい。私はそのとき心から思った。
バイト仲間との友情も深まっていった。そして、1年の留学生活を終えてお別れパーティーの日がやってきた。「李さんと会う前は、中国人がこんなに付き合いやすいとは思わなかったな」。1人の仲間のひと言に、私は複雑な思いがした。私と会う前は中国人をどんな目で見ていたのだろう。日本人を恨んで、毎日デモをしているように見えていたのかもしれない。
「近くて遠い国」。それは日中関係を言い表すのにふさわしい言葉だろう。昔から存在している見えない壁に阻まれ、中国人も日本人も頭の中で相手の姿を想像して最初の一歩を怖がって、なかなかその壁を越えられない。店長さんからのメールを読んで、思わず本棚にある飾りを手にとった。バイト仲間がくれたそのプレゼントは、一つ一つのハートがつながって大きな輪を作っている。壁を取り払い、心と心をつないで一つの輪を作っている。
両国の関係を一気に改善することなど不可能だが、まず個人と個人、グループとグループが心を込めて付き合えば、必ず友情の輪になれるだろう。そして、この輪がいくつも広がっていって、やがて中国と日本は「近くて遠い国」ではなく、「近くて近い国」になれるに違いない。それは夢ではなく近い将来に必ず訪れる光景だと、1年間を通して心の輪を作ってきた私は確信を持って言えるのだ。(編集/北田)
※本文は、第二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「壁を取り除きたい」(段躍中編、日本僑報社、2006年)より、李一●さん(上海交通大学)の作品「心の輪」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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