Record China 2015年12月19日(土) 10時50分
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最近、香港に行って、中国で発禁本になっている本を扱っている出版社や書店のオーナー、店主ら4人が10月中旬から相次いで行方不明になっている事件を取材した。この本屋は中国の発禁本を専門に扱っている「銅羅湾書店」だ。写真は銅羅湾書店。
最近、香港に行って、中国で発禁本になっている本を扱っている出版社や書店のオーナー、店主ら4人が10月中旬から相次いで行方不明になっている事件を取材した。この本屋は中国の発禁本を専門に扱っている「銅羅湾書店」だ。
筆者がこれまでも香港に行くたびに、この本屋さんをのぞいていたので気になっていたのだ。幸い、本屋は他の店員さんが引き継いで営業していたので、一安心したが、まだ4人は帰ってきていないという。
この4人が姿を消したのは広東省の深センや東莞、あるいはタイのリゾート地だった。タイで行方不明になった同書店の社長さんのマンションに、中国人数人が押し入っていたビデオが残されていたことからも、彼らの身柄を拘束したのでは中国当局ではないかと伝えられている。
ところで、香港では昨年も同じような事件が起きている。『中国の教父(ゴッドファーザー)習近平』という本が香港で出版されてベストセラーとなった。この本は習近平をマフィアのボスと同じなどと批判しているので、大陸では発売禁止となっているのだが、この本の版権をとった香港の出版社の社長が香港に隣接する広東省深センで失踪。その後、中国当局の発表があって、その社長は化学薬品を密売しようとして、密輸の罪で懲役10年の判決を受けたのだ。
香港では、この社長は罠にかけられて、逮捕されたのではないかといわれている。また、2年前にも反体制的な月刊誌の編集長も深センで逮捕され、もうすぐ裁判が開かれるとの情報もある。
香港の外交筋は「この4人も、これらの社長や編集長と同じように、別件の容疑で逮捕され、知らない間に裁判が行われ、有罪判決が突然、発表されるかもしれない」と語っていた。しかし、報道機関は出版社の関係者ではなく、書店の幹部が行方不明になるというのは極めて異例だ。なぜ、こういうことになったのか。
実は、この本屋は中国大陸からの中国人観光客が多いことでも知られている。団体で押し寄せて、知り合いに「お土産」として買っていくので、どんどん香港の発禁本が大陸に流入することになる。ある香港の知人は「習近平ら最高指導部はこれをかなり気にしている」と言っていた。
米紙ニューヨーク・タイムズは、香港では大きな書店グループに対して、このような発禁本はおろか、香港で出版された中国の政治に関する本の陳列や販売を止めるように中国から圧力がかかっていると報じており、今後も香港での言論の自由は一層厳しく制限されるのは間違いないだろう。
◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。
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