TPPの真の狙いは中国加盟=最大のメリットは国有企業に規律を課すルールづくり―民間シンクタンク主幹

Record China    2015年9月4日(金) 8時3分

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2日、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「環太平洋経済連携協定(TPP)と日本経済」とのテーマで記者会見し、TPPのメリットについて「中国が将来、加盟した場合に備えて、高い規律を課すルールを策定しておくことがTPPの大きな役割だ」と述べた。

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2015年9月2日、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は日本記者クラブで、「環太平洋経済連携協定(TPP)と日本経済」とのテーマで記者会見し、大詰めを迎えているTPP交渉のメリットについて、「現在メンバーでない中国が将来、加盟した場合に備えて、高い規律を課すルールを策定しておくことがTPPの大きな役割だ」と述べた。山下氏は農水省ガット室長なども務めた元農水官僚で、農政改革・農業改革などで活発な発言を行っている。

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同研究主幹は「TPP交渉の隠された最大のプレーヤーは現在メンバーでない中国。尖閣諸島周辺海域での中国漁船による海上保安庁巡視船衝突事件(2010年9月7日)のように、日本は中国による力の行使に対抗できないのが現状だ。力で対抗できないときにわれわれができるのはルールを作って、中国が加盟したときに備えることだ。今なら中国が参加していない場でルールを作ることができる」とTPP交渉の意義を強調した。

TPP交渉では、米国を中心に、貿易阻害的な側面を持った国有企業に規律を課す問題も協議されている。ある国の国有企業とその国に進出した外国企業との間の競争条件を同一にするためで、米国が狙っているのは中国の巨大国有企業。

山下研究主幹によると、日本は1%の関税を払うだけでコメを中国に輸出できるが、入ったあとに中国の国有企業が巨額のマージンを取るため、日本ではキロ300円で売られているコメが、北京では1300円に跳ね上がっており、事実上の関税が課された状態だという。「いくら中国が関税をゼロにしても、国有企業に規律を課さない限り、輸出できない。日本政府がTPPの場で問題提起しているとは思えない」としている。

山下研究主幹は、「数年前に米国で講演した際、フロアから、アメリカのマスコミはTPPは中国を外す装置だと理解している人が多いが、大きな間違い。将来、中国が加盟したときに中国にレベルの高い規律を課すためのルールを作る場だとのコメントをもらった。米国は壮大な戦略で交渉に臨んでいる」と語った。

日本政府はTPP参加に伴う経済効果に関して、実質国民総生産(GDP)を

0.66%(3兆2000億円)押し上げる一方、農業生産額が3兆円減少するとの試算を公表している。東京大学大学院の鈴木宣弘教授(農業経済学)によると、「自動車分野(部品輸入関税撤廃)での利益が確保できるかどうかが日本がTPPを進める上でのプラスマイナスを左右する」。農業分野で譲り、自動車分野で獲得する交渉も必要だが、そうしたメリット論に明け暮れているうちに、TPPの本来の目的である「アジア・太平洋地域における新しい貿易ルール作り」の理念がすっぽり抜け落ちてしまうことがないように祈りたい。(長澤孝昭)

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