八牧浩行 2015年6月12日(金) 7時51分
拡大
11日、中国人民日報の編集主幹を務めた北京在住評論家・馬立誠氏(写真中央)は記者会見し、第2次大戦後和解を果たした欧州の経験から学ぶべき教訓はドイツの「反省」、フランス、ロシアの「寛容」であると指摘。中国も和解に向けて努力すべきだとの見解を示した。
(1 / 2 枚)
2015年6月11日、中国共産党機関紙「人民日報」の編集主幹を務めた北京在住評論家・馬立誠氏は、日本記者クラブで記者会見し、第2次大戦後和解を果たした欧州の経験から学ぶべき教訓はドイツの「反省」、フランス、ロシアの「寛容」であると指摘。日本のリーダーは25回も過去の侵略戦争について謝罪の意思を表明しているとして、中国も和解に向けて努力すべきだとの見解を示した。
【その他の写真】
馬氏は中国のオピニオン誌『戦略と管理』(2002年6号)の中で、「対日関係の新思考−中日民間の憂い」と題する論文を発表。中国国内におけるナショナリズム(国粋主義)や狭隘な反日感情に疑問を投げかけた。この論文は中国国民から非難されたが、中国のメディアは擁護し、日本でも新しい思想として反響を呼んだ。日中双方に偏狭なナショナリズムを煽る報道が目立つ中、このような開明的な意見は極めて貴重である。
馬氏の会見要旨は次の通り。
日本と中国は2000年の友好の歴史を築いてきた。長い目で見れば、今日のような(厳しい)状況は一時的なものだと考える。日中協力の歴史を注視すべきである。
温家宝前首相は2007年に来日した際、「第2次大戦後の日本は平和の道を歩んでいる」と述べたが、その通りだと思う。戦争の歴史だけを取り上げることは憎しみにしかならない。日中の協力の歴史を注視すべきである。日中間の貿易額は年間3500億ドル、中国に進出している日本企業は2万3000社、中国での雇用は1000万人に上っている。日本の対中ODA(政府開発援助)は360億ドルに達し、160もの大きなプロジェクトが実施されている。
◆両国は偏狭なナショナリズムの克服を
日中両国に根強いナショナリズムの克服が重要だ。世界的に偏狭なナショナリズムが冷戦終結後に出てきた。EU(欧州連合)はナショナリズムを克服し統合に向かったが、東アジアでは、まだ争っている。。
日中間で争っている釣魚島(尖閣諸島)はわずか6平方キロの小さな島だ。中国とインドの間には9万平方キロもの領土をめぐり問題があるが、両国は友好関係を保っている。この小さな島を中日関係の足かせにしてはならない。
地政学的には中国は大国になったが、日本は従来からの大国である。2つの大国のアジアにおける影響力は非常に大きい。世界がグローバル化している現在、戦争で解決しようという考えをとるべきではない。中国は急速に発展し、経済規模で日本の2倍以上になったが、製造業の品質、環境保護などで中国は遅れており、日本に学ぶべきだ。
◆東アジアは「和解学」を立ち上げよ
東アジアは「和解学」という学問を立ち上げるべきだ。フランス・ドイツ、ロシア・ドイツの和解を教訓とすべきだ。ドイツの「反省」、フランス、ロシアの「寛容」の態度があった。欧州の経験から学ぶべき教訓は「平和」「反省」「寛容」の3点である。日本はドイツに学び第二次大戦の侵略への反省をしっかりとしてほしい。メルケル独首相が「寛容なフランスがなければ今日のドイツはない」と語ったが、ドイツは懐が深いと思う。
1972年から2008年まで、日本のリーダーは25回も過去の侵略戦争について謝罪の意思を表明した。中国も和解に向けて努力すべきである。(この点は)昨年私が出版した「憎しみに未来はない―中国新思考」でも取り上げた。
日本のソフトパワーは評価でき、旅行や留学を通じた交流も重要であり、実際に相手国に行って体験すれば相互理解が進む。 中国ではアメリカ映画が溢れているが、日本映画はほとんど上映されていない。かつては日本映画が上映され、「君よ憤怒の河を渡れ」「一休さん」「おしん」などが人気を集めた。今年6月に「ドラえもん」が久しぶりに上映され大人気となったが、今の日本を描いた映画が上映されないのは妥当でない。
日中首脳会談昨年11月以来2回も開かれた、訪日中国人観光客が急増した。この関係改善をさらに拡大したい。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
この記事のコメントを見る
八牧浩行
2014/8/23
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら
業務提携
Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る