日本僑報社 2015年4月1日(水) 1時55分
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自己主張の国だと言われる中国の人にとって、日本人の「以心伝心」は、どこか不思議で、大きな力を秘めていると感じられるようだ。写真はたこ焼き機。
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中国は自己主張の国だと言われる。人口が多いため、自ら主張しなければ何もしてもらえない社会である。そんな中国人にとって、日本人の「以心伝心」、言葉にしなくても相手の気持ちを察するというコミュニケーション手段は、どこか不思議で、大きな力を秘めていると感じられるようだ。山東大学威海分校翻訳学院の庄恒さんは、日本祭りを通して感じた「以心伝心」について、次のようにつづっている。
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楽しみにしていた日本祭りがようやく開催された。本格的な日本料理はどうやって作るのか。本当の日本人は一体どのような人間なのか。教科書に書かれたように行動するのか。日本語科の学生として、大変興味を持っていた。
日本祭りには、いろいろ感動するようなことがたくさんあった。交流会で、日本人は相手のことをよく考えることや、いつもまじめに規則通りに行動することなどがよく理解できた。日本祭りで一番印象に残ったのは、日系企業の社長さんだ。催しものの一つとして、「たこ焼き」の実演販売会があった。販売会が終わって机を見ると、大変汚れていた。「どうやって片付けたらいいのだろうか。きっと面倒くさいだろうな。もし掃除をしたら、私の服が汚くなるかもしれない」と、私は困惑していた。
そこへ社長さんが雑巾を持ってやってきた。私はまだ二年生で、社長さんが何を言っているのかよく理解できなかった。どうしたらいいのかと迷っていると、なんと社長さんが自分で掃除を始めたのだ。汚れを気にすることもなく、机を一生懸命にきれいにした。社長なのにこんな汚れ仕事をすることに、私はとても驚いた。社長さんがやっていることがどうして私にできないのか。顔から火が出るほど恥ずかしかった。その時、社長さんと目が合った。「社長さん、掃除のことを私にまかせてください」という気持ちを私の目から感じ取ったのか、社長さんは首を縦に振って、ほかの所に行ってしまった。
小さなことだが、一生忘れられないのは、この瞬間の「以心伝心」である。実は、毎日勉強が忙しいせいもあって、私たちの寮ではあまり掃除をしなかった。紙くずや果物の皮などが散らかり放題であった。何度もほかの人に注意したが、効果がなかった。そんな時、「そうだ。日本人の以心伝心でやってみよう」と思い付いた。一人で4時間かけて部屋を掃除した。
夕方になって、同室の人たちが次々と帰ってきた。きれいになった部屋を見回して、みんな驚き、それと同時にうつむいて恥ずかしそうな顔をした。多分何かを感じ取ってくれたのだろう。それからはずっと私たちの部屋はきれいで清潔な状態になっている。池に投じた小さな石、つまり小さな親切が大きな感謝となって波紋が広がったのだ。日本人の「以心伝心」というコミュニケーションは、本当に不思議な力を持っている。
私は日本語を学ぶ者として、多くの日本人と触れ合い、「以心伝心」のような日本人の心情をもっと勉強したい。社長さん、素晴らしい授業をしてくださってどうもありがとうございました。(編集/北田)
※本文は、第二回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「壁を取り除きたい」(段躍中編、日本僑報社、2006年)より、庄恒さん(山東大学威海分校翻訳学院)の作品「日本人の『以心伝心』」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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