中国主導のアジアインフラ投資銀行に加盟希望国が続出=英国が表明、韓国・豪・独・仏・伊・加も追随か―迫られる日本の判断

八牧浩行    2015年3月14日(土) 8時10分

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中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国が参加することになった。これにより国際金融機関として信認が高まることになる。イタリアはじめとする他の欧州諸国やカナダやオーストラリア、韓国なども追随する可能性がある。写真はAIIBの本部が置かれる北京。

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中国主導で今年末にスタートするアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国が参加することになった。主要7カ国(G7)で参加するのは初めて。これにより国際金融機関として信認が高まることになる。この結果、発行債券などの格付けが上がり、低金利での資金調達が可能となる。イタリアはじめとする他の欧州諸国やカナダやオーストラリア、韓国なども追随する可能性がある。

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経済成長が著しいアジアでは、成長を支えるために、毎年少なくとも7500億ドル(約95兆円)に上るインフラ投資が必要とされている。このニーズを狙って、中国が「新興国による新興国のための国際投資機関」を標榜して主導したのがAIIBだ。上海に本部を置き資本金は1000億ドル(約12兆円)。出資比率はGDP(国内総生産)に基づいて決まるため、参加国中最大の経済大国、中国が半分以上の出資比率を確保、大きな発言権を握ることになる。総裁に中国の金立群・AIIB設立準備委員長が就任する見通しだ。

この投資銀行には、東南アジア10カ国、インドをはじめ27カ国の参加が既に決まっており、英国で28カ国目。先進国ではニュージーランドが参加。南シナ海で中国と対立するフィリピン、ベトナムも加わっている。アジア専門家によると、深刻な投資資金不足にあえぐアジア諸国にとって、立ち遅れたインフラ整備を支援するという、中国の提案を拒否する理由は見当たらないという。先進国のインフラ開発会社や商社などは「参加しないと21世紀の有望市場・アジアの事業などで不利になるのでは」と懸念しているという。

AIIBと役割が似た国際機関としては、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)がある。それぞれ米国と日本の発言力が強く、歴代総裁ポストは世銀が米国人、ADBは日本人が就任する。中国をはじめとする新興国が発言権の増大(出資分担金増)を求めるIMF改革は米議会が承認せず実現していない。現状に不満を抱くブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)は14年7月、「BRICS開発銀行」の設立でも合意に至った。AIIB、BRICS開銀に加えて、習近平国家主席は14年11月、400億ドル(約4兆8000億円)を拠出して、シルクロード沿いの各国のインフラ整備などを支援する基金創設を表明した。

◆中国の世界戦略に組み込まれる?

一方、中国はAIIBへの参加を日本、米国にも要請。「日本はアジアの重要な国であり、日本もアジアの発展に向けてAIIBで重要な役割を担ってほしい」と伝えてきたという。日米両国はAIIBが既存のアジア開発銀行(ADB)と業務が重複し、組織運営も不透明だと指摘して慎重な姿勢を示してきた。AIIBは中国の巨額資金が拠りどころ。中国の国益を優先する「世界戦略の先兵となるのでは」との懸念は拭えない。AIIBは理事会を常設せず、総裁以下の事務方に大きな権限を与える方向で、総裁の権限が大きく、チェックが効きにくい。

しかし、英国に続いてドイツ、イタリア、フランスなどの欧州諸国やカナダ、オーストラリア、韓国なども追随する可能性がある。米国も参加国増加は止められないと見てAIIBを容認する姿勢に転じている。シーツ財務次官は、「国際通貨基金(IMF)など既存の国際金融機関を補完し、(1)透明性とガバナンス重視、(2)借金国の返済能力への配慮、(3)環境重視、(4)高水準の調達基準―などを順守すれば歓迎する用意がある」と表明している。カート・トン米首席国務次官補代理(経済担当)も2月、アジア開発銀行研究所(東京・霞が関)で講演し、「米国はAIIB設立に反対していない。中国が責任あるステークホルダーとなり、国際社会にさらに多くの公共財を提供することを望む」と踏み込んだ。

世界一の成長センターであるアジアのインフラ整備を商機とみてAIIBに関心を示す国が続出しているという。「AIIB構想が具体化するにつれ、新たな対応を迫られているのは日米の側」(日本の有力大教授)との指摘もある。中国主導の構想にあえて関与し、「内側から日本の立場を反映すべきだ」との意見もあり、日本は難しい選択を迫られそうだ。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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