八牧浩行 2015年3月10日(火) 9時9分
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中国が量的金融緩和(QE)を実施、人民元の引き下げ誘導に乗り出すのではないか、との見方が広がっている。各国で量的金融緩和競争が展開されている中で、中国がこれに参戦すれば世界経済に与える影響は甚大と懸念されている。写真は北京市内。
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中国経済情報筋によると、中国が量的金融緩和(QE)を実施し、人民元の引き下げ誘導に乗り出す、との見方が広がっている。世界景気の低迷を背景に欧州や日本をはじめとする各国で量的金融緩和競争が展開されている中で、中国がこれに参戦すれば世界経済に与える弊害が大きいと懸念されている。
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李克強首相は第12期全国人民代表大会(全人代)第3回会議で、2015年の実質経済成長率の目標を14年より0.5ポイント低い「7%前後」とする方針を表明した。公共投資などで高成長を達成してきたこれまでの政策を転換、経済改革を通じた安定成長への軟着陸を目指すことを打ち出した。成長率目標に関し「必要性と可能性について考慮、客観的な実情に即した」と説明、「中国経済は『新常態(ニューノーマル)』に突入した」と強調し、年2ケタの伸びを続けるような高速成長が終わり、7%前後の中高速成長の時代に入ったとの認識を示した。
14年の中国実質成長率は7.4%と24年ぶりの低い伸びにとどまり、政府目標の7.5%に届かなかった。景気の安定の重点目標として雇用確保を打ち出し、「都市部で年1千万人以上の新規就業」を目指すが、容易ではない。物価上昇率目標を14年よりも0.5ポイント下げ、3%前後としたが、物価の伸びはこのところ大幅に鈍化しており、早晩、デフレ(物価下落)に陥るとの懸念も取りざたされている。
こうした中で出始めたのが、中国が本格的な金融緩和に踏み切るとの観測だ。2008年のリーマンショック後、中国が50兆円規模の財政投資を実施、世界的な金融恐慌を食い止めた経緯がある。その後、米国をはじめとする世界の先進各国は苦境を脱するため量的金融緩和に踏み切った。日本の異次元緩和もその一環といえる。
その後米国の量的金融緩和(QE)は出口を探る動きとなっているが、日本、欧州はじめ多くの国で金融緩和競争が展開されている。世界最大規模の消費・債権国家でもある中国がこれに加われば、影響は甚大だ。
中国人民銀行は、景気を支えるため昨年11月に約2年4カ月ぶりに利下げを実施、今年3月に追加利下げに踏み切った。14年通年の消費者物価の伸びは2%にとどまり、高い金利水準維持の必要はない。基準金利水準は依然高水準で、さらに利下げの余地はある。 15年1月も、主要70都市の新築住宅価格は続落し、下げ止まりの気配はない。
今後、中国人民銀行が本格的な量的金融緩和政策(QE)に踏み切れば、人民元安に拍車がかる懸念もある。地方政府の抱える不良資産を買い取る形で、人民銀行が人民元を放出する可能性があるからだ。中国の外貨準備を保有している人民銀行が地方政府の不良資産を買い取る元手として、米国債を売却するのではないかとの見方もくすぶる。米国債売りと人民元安誘導がセットとなった中国版QEが実施されれば、世界のマーケットの波乱要因になるとの警戒感が世界市場で広がっている。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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