米、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」を容認=現時点では加盟検討せず―米国務省高官が東京で明言

八牧浩行    2015年2月10日(火) 6時21分

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9日、来日中のカート・トン米首席国務次官補代理(経済担当)は都内で講演し、中国を中心に設立準備が進む「アジアインフラ投資銀行」について、米国は設立に反対していないことを明らかにした。ただ、既存の国際金融機関との連携が不可欠との見方を示した。

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2015年2月9日、来日中のカート・トン米首席国務次官補代理(経済担当)は、アジア開発銀行研究所(東京・霞が関)で講演し、中国を中心に設立準備が進む「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」について、米国は設立に反対していないことを明らかにした。ただ、地域経済の発展に寄与するよう、既存の国際金融機関との連携が不可欠との見方を示した。ただ「現時点で加盟を検討していない」と語った。

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急成長するアジアでは、経済成長を支えるために、毎年少なくとも7500億ドル(約95兆円)に上るインフラ投資が必要とされており、このニーズを狙って、中国が主導しているのがAIIB。上海に本部を置き資本金は1000億ドル(約12兆円)。出資比率はGDP(国内総生産)に基づいて決まるため、参加国中最大の経済大国、中国が半分以上の出資比率を確保、大きな発言権を握ることになる。

この投資銀行には、東南アジア10カ国、インドをはじめ26カ国の参加が既に決まっている。南シナ海で中国と対立するフィリピン、ベトナムも加わっている。ニュージーランドやサウジアラビアなど一部の先進国や中東の富裕国も参加を決めた。深刻なインフラ資金不足にあえぐアジア諸国にとって、立ち遅れたインフラ整備を支援するという、中国の提案を拒否する理由は見当たらないという。

AIIBには日本と米国にも参加要請があったが、両国はAIIBが既存のアジア開発銀行(ADB)と業務が重複し、組織運営も不透明だと指摘して警戒している。とはいえ、「AIIB構想が具体化するにつれ、新たな対応を迫られているのは日米の側」(日本の有力大教授)との指摘もある。豪州は経済閣僚が参加への意欲を示し、韓国にも参加論がくすぶる。欧州でもアジアのインフラ整備を商機とみてAIIBに関心を示す国があるという。

日本のある外交関係者は「米国は豪州や韓国のAIIB参加を黙認し、米国自身も日本の頭越しに中国と手を結ぶのではないか」と危惧する。中国など新興国が発言権の増大(出資分担金増)を求めるIMF改革は米議会が承認せず実現していない。米国はかねて「中国が責任あるステークホルダーとなり、国際社会にさらに多くの公共財を提供することを望む」(国務省)と表明しているが、この日のトン米首席国務次官補代理の「反対しない」との発言はこの見解を一歩進めて、AIIBを容認したものと注目される。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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