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技術立国日本、理工系学部志望者増が急務―立石信雄オムロン元会長

立石信雄
配信日時:2018年2月4日 5時20分
  • 技術立国日本、理工系学部志望者増が急務―立石信雄オムロン元会長

かつての高度成長時代、大学の理工学部は花形の存在で志望者が殺到した。ところがバブルが崩壊した1990年代から2000年代にかけて理工系学部への進学志願者数が、年々減り続け、技術立国を標ぼうする日本にとっては放置できない事態に陥った。ところが産官学の協力もあって最近この傾向がやや改善されつつあるのは心強いことである。

文部科学省などの統計によると、理工系の志望者は最近学部で増加。修士課程は横ばいで、博士課程は減少傾向にあるという。

資源小国、科学技術立国を標榜する日本では、従来から加工貿易によって産業・経済を支えてきた。そうした中、最近は産業構造の変化、グローバル化の進展に加え、国内の生産拠点や雇用、研究・技術開発部門を海外に置く企業が増え、国内の“産業空洞化”が懸念されている。
 
一方で、大学進学希望者の理工学系志望者は、景気低迷や理系のノーベル賞受賞者が続出したこともあって、高まりをみせている。大学側も優秀な理数系学生育成の特別事業や理数重視型の入試などを展開しており、将来の産業基盤を支える科学技術研究者の増加が期待できる。

「理数嫌い」「理工系離れ」などに対し、文科省としても、小・中・高校の理数教育の拡大・充実(学習指導要領への反映、高校の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」事業の実施などや科学技術・理数学生育成事業の支援など、様々な科学技術・理数教育充実のための施策を推進しているという。

こうした国の取組に加え、理工学系大学・学部の高大連携の積極的な展開、理数科目重視の特別選抜、国際科学オリンピックや科学技術コンテスト等の評価を活用した特別選抜(推薦・AO入試等)の拡大などと、“不況に強い理工系”といった就職実績とが相まって、ここ数年、理工学系志願者は増加しているという。

 最近は特に将来のキャリア形成や就職を意識して、理系を志願する「理系女子“リケジョ”」の増加や工業高校の進学率の向上など、理工学系志願者の裾野も拡大しており、理工系人気は定着してきている。こうした“理工系人気の萌芽”を育てるためにも、国や企業による“産業空洞化”対策は喫緊の課題である。

多くの学生が応募する魅力ある理工系学部にするためには、研究室だけに閉じこもるのではなく、人間的な面、社会的な面での見識を高めるために、社会や産業界などとの交流を積極的に拡大し、研究活動だけでなく将来の日本に適応できるような努力を望みたいし、学会という狭い世界だけでなく、広く地域社会や世界に成果を発信できるタレントになっていただきたい。

同時に経済界もその地域にある大学が、知識やソフトの源泉として地域の教育風土の醸成、地域の再開発や企業興しに貢献してもらうべく、産業と教育の橋渡し役を果たしていくと同時に、技術変革の中で一般市民に開放したリカレント教育(生涯にわたって教育と就労を交互に行う教育システム)を積極的に進めてもらいたい。
<羅針盤篇21>
  
立石信雄(たていし・しのぶお)
1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC=企業市民協議会)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。公益財団法人日本オペラ振興会常務理事。エッセイスト。

※掲載している内容はコラムニスト個人の見解であり、弊社の立場や意見を代表するものではありません。

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