経済界訪中団が中国副首相と会談、市場拡大へ改善要望訴え―官民の交流活発化

八牧浩行    2025年2月21日(金) 10時30分

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日中経済協会の進藤孝生会長ら日本の経済界代表は16~21日の日程で中国を訪問。17日に北京市内で中国の何立峰副首相と会談し、対話強化と対中改善の要望を訴えた。写真は人民大会堂。

日中経済協会の進藤孝生会長(日本製鉄相談役)ら日本の経済界代表は16~21日の日程で中国を訪問。17日に北京市内で中国の何立峰副首相と会談し、対話強化と対中改善の要望を訴えた。

訪中団は進藤氏が団長を務め、経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)と日本商工会議所の小林健会頭(三菱商事相談役)が最高顧問として参加した。日中経済協会はほぼ毎年、訪中団を派遣。新型コロナ禍の影響で一時途絶えたが、昨年1月に約4年ぶりに再開した。47回目の派遣で、大手企業幹部ら昨年を上回る約230人が参加した。

会談で十倉氏は「国際情勢が複雑さを増している今こそ、政府間、企業間、官民の間で具体的な行動につなげていくことがますます重要だ」と強調。企業が安心して投資や市場を拡大するためのビジネス環境の改善を要望した。中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、経済界の期待は大きい。

何副首相は「今回の訪中が世界の貿易を促進する重要な役割を果たすことができる」と歓迎。対中関税を引き上げたトランプ米政権を念頭に「世界的に保守主義、単独主義が台頭している」と懸念した。

訪中団は企業や駐在員の安心・安全の確保が重要だとして、反スパイ法の運用の透明性確保や、中国のSNS(ネット交流サービス)での誤った日本批判の拡散への対応などを求めた。

経済界訪中団は北京での会談の後、湖南省長沙市に移動し、多くの中国民間企業と交流した。

日中両国政府も関係改善へ急速に動く、習近平国家主席の国賓来日探る

日中両国政府は日中関係の安定を2025年の外交課題に据え、「戦略的互恵関係」の一層の進化を志向。ハイレベルの往来で実績を積み重ね、関係改善の象徴として延期したままの習近平国家主席の来日時機を探る。

日本政府や与党幹部の中国訪問が相次いでいる。森山裕自民党幹事長、西田実仁公明党幹事長らは1月13〜15日に中国を訪れ、日中与党交流協議会を約6年ぶりに開催した。中国の李強首相をはじめ中国共産党で序列4位の王滬寧全国政治協商会議主席や王毅党政治局員兼外相と会談した。李強氏に早期の訪日を要請したのに対し、同氏は「良い時期に枠組みの中で計画が進む。そのときにしっかり対応したい」と答えた。日本が2025年の議長国として春以降に国内で開く日中韓首脳会談への出席が念頭にある。

石破首相は早期の訪中に意欲を示しており、森山氏は習主席に宛てた石破氏の親書を手渡し、李強首相は石破首相の訪中を歓迎した。

江藤拓農相は1月17日、訪問先の北京で韓俊農業農村相と会談した。韓氏は日本が求めている日本産牛肉の輸入再開に理解を示し、再開の前提となる動物衛生・検疫の協定の早期発効へ調整を急ぐと確約した。江藤氏は記者団に輸入再開の時期は「それほど遠くない」との見通しを示した。

自衛隊と人民解放軍が7年ぶり交流

一方、中国人民解放軍の代表団6人が1月13〜17日の日程で来日した。中国軍の部隊が来日したのは2018年11月以来約7年ぶり。防衛省の大和太郎防衛政策局長や統合幕僚監部の川村伸一運用部長と懇談したほか、自衛隊中央病院(東京・世田谷)や海上自衛隊の舞鶴基地(京都府)を訪れた。中谷元・防衛相は「率直な議論と意思疎通を重ねていく重要性を確認した。日中間における建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく意義があった」と語り、自衛隊部隊の訪中についても検討する方針だ。

日中両政府が模索するのは新型コロナウイルスの感染拡大を理由に見送られたままの習氏の国賓来日だ。日中関係は最近急速に改善しているものの、日本政府は軌道に乗せるためには習氏の来日が欠かせないとみる。習氏が13年に国家主席に就いてから日本を訪れたのは19年の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)のときだけで、単独訪問は一度もない。外務省幹部は「中国は国賓にこだわりがある。習氏と率直に話せる環境をつくる必要がある」と語る。

2020年の習氏の国賓来日の調整時には18、19年と当時の安倍晋三首相が訪中した。石破首相はかねて訪中に意欲を示しており、19年12月の安倍氏以来の首相訪中を日中関係の展望や世論を見極めて模索する。

トランプ第二次政権のアジア政策が不透明な状況の中、日本政府は対中関係を安定させる戦略を模索し、中国政府もこれに呼応する。日米中3カ国がアジア地域で行き来し、共存共栄の道を探ることは極めて重要だ。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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