<自民党総裁選候補者9人が論戦>対中対話重視は共通、安全保障・抑止力では濃淡

八牧浩行    2024年9月21日(土) 9時0分

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自民党の総裁選挙に立候補した9人が日本記者クラブでの公開討論会などに臨み、外交や安全保障政策、対中姿勢でも活発な論戦を繰り広げた。

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自民党の総裁選挙(12日告示、27日投開票)に立候補した9人が日本記者クラブでの公開討論会(9月14日)などに臨み、外交や安全保障政策、対中姿勢でも活発な論戦を繰り広げた。米国は11月の大統領選を控えて内向き志向を強め、中東ではパレスチナ自治区ガザで交戦が続く。隣り合う大国・中国の経済・軍事両面での台頭も顕著だ。新総裁は首相就任直後から外交の手腕が問われる。

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自民党総裁選討論会では中国への対応を巡り活発なやり取りが展開されたが、対話を重視する姿勢は各候補とも共通だった。

対中「戦略的互恵関係」を踏襲

岸田文雄首相は2023年11月の日中首脳会談で日中両国の共通利益の拡大を目指す「戦略的互恵関係」の推進を再確認したことや防衛力強化や米欧との連携など現政権の基本方針を各候補とも踏襲する方針を明らかにした。

抑止力強化の具体策を挙げたのは石破茂元幹事長と河野太郎デジタル相。石破氏は集団安全保障の枠組みである北大西洋条約機構(NATO)を模した「アジア版NATO」の創設に向けた外交努力を積み重ねると強調した。

河野氏は自衛隊による原子力潜水艦の配備を提起した。日本近海を抜ける他国の潜水艦の動きと対峙するための必要性を唱えた。米英豪の安保協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」に日本が加わることも選択肢に挙げた。

8月26日に起きた中国軍機による領空侵犯を巡って、高市早苗経済安全保障相は「日本に何かを仕掛けても全く効果はないと思わせないといけない」と指摘した。

小林鷹之前経済安保相は「政府は抗議して再発防止を申し入れたが、政治としてもしっかり後押ししないといけない」と提案した。茂木敏充幹事長は「力による一方的な現状変更の試みに毅然と対応すべきだ」と語った。

保守派とされる高市氏も中国との対話や協力の必要性を訴え、「世界共通課題のような案件は(日本、中国が)ともに取り組むべきだ」と強調。小泉進次郎元環境相は「首脳レベルの戦略的外交を進め率直な対話をしない限り諸課題を解決できない」と言明した。


日中トップ外交を志向

日中友好議連の会長を務めた経験がある林芳正官房長官は「私は知中派だ。中国と向き合っていくためには中国を知っていることは一つのポイントとなる」との考えを示した。

加藤勝信元官房長官も「首脳会談をやっていくべきだ。『ここは譲れない』ということを伝えていくのが大事だ」と話した。上川陽子外相は「戦略的互恵関係を推進するとともに建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく」と岸田政権の外交の継続を主張した。

総裁選候補者の主な発言

■高市早苗経済安全保障担当相

日本は核不拡散条約を批准しており、「持たず」「つくらず」。これを守らなければいけない。ただ、米国の拡大抑止の下にあるのであれば「持ち込ませず」という部分についてはどう考えるのか。これをしっかりと議論しなくてはいけない。

■小林鷹之前経済安全保障担当相

中国が南シナ海や東シナ海の現状変更を進めている。日本の防衛力を抜本的に強化する。

■林芳正官房長官

私は知中派。己を知り、敵を知れば百戦あやうからず。中国と向き合っていくためには中国のことを知っていることは一つのポイント。また農産物の輸出一つをとっても、規制緩和解除についていろんな交渉をしているが、相手を知って交渉しなければ結論を得ることは難しいだろう。中国と仲が良いからといって、譲ったことはない。

■小泉進次郎元環境相

(中国訪問の経験は?)台湾は多くある。自民党青年局長のときに、自民党青年局は基本的に台湾との窓口をやっていたから。中国には当時、私の父が総理で2001年から務めていて、そのときに靖国参拝で大変なこともあり、リスクを取ることは賢明ではないだろうと…。中国には行ったことはない。中国は今、一党独裁から一人独裁になりつつある。トップ同士での会談ができない限り、さまざまな懸案事項に大きな前向きな打開はないと思う。

父の純一郎元首相が金正日総書記と会談している。歴史の中で関係を築いた礎の下に、同世代同士で新たな対話機会を模索する。

■上川陽子外相

安全保障戦略の第一の要諦は外交にあると思っている。抑止力を発揮していくのが大前提。そのためには平和的外交をいかに進めていけるかが問われている。日本は伝統的に中東で大変バランスの取れた外交をしてきた。

■加藤勝信元官房長官

日朝首脳会談で拉致問題に答えを出す方針で取り組んできた。時機を見極めて話ができる関係をつくる。

■河野太郎デジタル相

いかに中国の過剰生産問題に当たるか、中国の半導体その他の問題に当たるか。民主主義の国々でしっかりと同じ戦略を持って当たっていくことが、中国に対しての力になっていくと思う。

日本はパレスチナの2国家解決にずっとコミットし、いずれ条件が整えばパレスチナの国家承認をすると言ってきた。日本がこの2国家解決にコミットしているというのを今こそ示すため、パレスチナの国家承認をすべきだ。少なくとも在京の公館の地位を高める。それを今こそやるべきではないか。

■石破茂元幹事長

アジアで集団安全保障を模索していくべきだ。国連が機能しない時代にアジアに集団安全保障の仕組みを作るのは喫緊の課題。アジア版NATOの創設を検討すべきだ。日米同盟の対等性は常に希求されるべきものであり、日米地位協定の改定を目指す。

トランプ氏が米大統領に返り咲いた場合、日本防衛などの条件として在日米軍の駐留経費などの負担増を求められる可能性を問われ)負担増は正当性を持たない。(日本がすでに十分な負担をしており)論理的に数字で説明する。

■茂木敏充幹事長

アジア版NATOは現実的ではない。欧州と異なりアジアは多様な価値観、体制の国があり、アジア集団安保は現実的ではない。

11月5日の米大統領選で次期大統領が決まれば早期に会談する。2025年1月20日の大統領就任式に先立って意思疎通し、日米が共通の認識を持つ状況にする。

候補者は総裁選を勝ち抜いて首相に就けば「日本の顔」として外交の舞台に立つ。11月にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や20カ国・地域(G20)首脳会議があり、新首相と習近平国家主席が顔を合わせる可能性がある。対等に渡り合える候補は誰なのか、論理構成力、アピール力、胆力などが問われる。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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