米中が急接近、4月上旬のフロリダ首脳会談で協調アピール=安倍首相の「中国仮想敵国論」、空回り―求められる全方位外交

八牧浩行    2017年3月23日(木) 5時10分

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米国のトランプ政権の中国との急接近が目立っている。トランプ大統領と習近平国家主席が4月上旬に、フロリダのトランプ氏の別荘で会談する。日本の外交筋は、頭越しに「ディール(取引)」によって物事が決められるのではないか、と疑心暗鬼にかられている。資料写真。

米国トランプ政権の中国との急接近が目立っている。米中外交筋によると、中国の習近平国家主席は4月上旬に訪米し、トランプ米大統領とフロリダのトランプ氏の別荘で会談する。日本の外交関係者は日本の頭ごなしに、「ディール(取引)」によって物事が決められるのではないか、と疑心暗鬼にかられている。

トランプ大統領は親密ぶりをアピールするため安倍首相との会談が行われたフロリダの別荘に招待する。予定される米中首脳会談の協議内容は、貿易・投資、北朝鮮など多岐にわたる。

首脳会談で習主席は、トランプ大統領が主導する「米国経済拡大」への協力策を伝える。具体的には(1)インフラ増強へ投資拡大、(2)米国における雇用創出への中国の寄与、(3)対米輸出の自主規制―などとなる。同筋によると、会談後に中国の製造産業の対米投資と鉄鋼業などの輸出自主規制が発表される見込みという。

トランプ大統領、習主席ともに、米中関係が正常に機能していることや、複雑化する米中間を取り巻く懸念を共に管理していくことが可能であることを世界に誇示することを狙っている。

中国には、共産党大会を今秋に控えて、より早い時期に、対米関係を安定させたい意向がある。一方、「米国ファースト」を掲げ経済再建を主導するトランプ政権としても、経済面で中国からの譲歩を引き出したい狙いがある。

米中外交筋によると、ミサイル実験や金正男氏暗殺で緊迫化している北朝鮮情勢も主要テーマとなり、新しい米中協力の道を探る。米中間の共通の目標に向けた新機軸が打ち出される可能性もある。

世界最大の人口と消費市場を擁する中国には、GM、フォード、アップル、ボーイング、ウォルマートはじめ多くの米国企業が進出している。トランプ大統領としても中国から多くの好条件を引き出すことで「米国経済再建」につなげたい考えだ。さらに中国の華僑ネットワークなどを駆使した外交パワーは侮れない。米政府高官は 「中国と建設的で、結果を重視した関係をめざす」と説明している。

米中外交筋によると、毎年実施されている、米中閣僚と経済界トップが集結する「米中戦略的対話」も継続される予定という。

トランプ氏は当初台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」政策見直しを示唆していたが、これをあっさり撤回。かつて強く非難した対中貿易赤字、人民元や南シナ海の問題でも、最近は発言を控えている。

一方、安倍政権のパフォーマンス優先の外交安全保障政策手法は空回り気味だ。日朝関係は在任中に拉致問題を解決すると豪語したが、全く進展していない。北方領土交渉も進んでいないことが、昨年12月のプーチン大統領との日露首脳会談で露呈した。

 中国に関しては、外交的な努力が希薄で、厳しい状態が続いている。ある閣僚経験者は「日本の本来の役割は、米中の間に入ってトランプ大統領の一国保護主義的な政策を抑えること。安倍首相がその役回りを担うチャンスだったが、米中首脳会談開催で出番はなくなった」と指摘。それでも「世界の貿易戦争回避へ、TPP挫折の後、本来は東アジア地域包括的経済連携(RCEP=日中韓インド・東南アジアなど15カ国で構成)を主導すべきだ」と力説する。

◆価値観の違う国に行き、摩擦を解消すべき

安倍首相ほど外遊した首相はいない。第2次政権以降で外遊51回。訪問国・地域は東南アジアや欧米を中心に延べ70に上る。国内向け露出度が上がり、支持率アップには効果的だが、行った先々で巨額の援助金を約束しており、総額は数1兆円以上に達する。価値観の同じところを回ってカネをばら撒くだけでは効果は薄い。

外交とは価値観の違う国に行き、友好促進を働きかけ、摩擦を解消し説得することである。巨額の財政赤字にあえぎ、貧困家庭が急増する中、「国内に目をもっと向けるべきだ」との声も高まっている。

自民党幹事長を務めた古賀誠氏はTBS番組で、「日米同盟が外交の基軸であることは間違いないが、あくまでも手段であって、これがアジア太平洋の平和、世界の平和にどういう役割を果たすかが大事だ。全方位外交が望まれる」と戒めている。

丹羽宇一郎・元駐中国大使・日中友好協会会長は、中国を仮想敵国視して軍備増強を志向する安倍政権に対し、「日中は引っ越しのできない隣国で、歴史・文化も密接に絡んでおり、最大の貿易投資相手国であり、仮想敵国論は愚の骨頂だ」と強調、友好関係の強化を訴えている。今こそ大平正芳首相が唱えた軍事だけでない外交政策による「総合安全保障」展開が必要だろう。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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