米中両国は軍同士も対話、「衝突せず対抗せず」が共通認識=『トランプ新政権と米中関係の行方』シンポで中国・国際戦略委員長

八牧浩行    2017年3月6日(月) 5時0分

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シンポジウム「トランプ新政権と米中関係の行方〜中国のオピニオンリーダーが語る中国外交と安全保障戦略〜」が東京都内で開催された。米トランプ政権の誕生により、世界情勢が流動的になる中、中国はどのような外交・安全保障戦略をとろうとしているのか。写真は会場風景。

2017年2月24日、シンポジウム「トランプ新政権と米中関係の行方〜中国のオピニオンリーダーが語る中国外交と安全保障戦略〜」(笹川平和財団・北京大学国際戦略研究院主催)が東京都内で開催された。米トランプ政権の誕生により、世界情勢が流動的になる中、中国はどのような外交・安全保障戦略をとろうとしているのか。中国を代表する国際戦略の論客である張沱生・中国国際戦略研究基金会学術委員長が講演した。米中両国は経済貿易上、重要な協力パートナーであり、対テロ、エネルギー、環境保護などで相互協力は非常に重要だと指摘。「軍同士も中米は対話しており、『衝突せず対抗せず』というのが共通の認識であり、安全保障のリスクは制御可能である」と強調した。発言要旨は次の通り。

トランプ大統領は米国大統領選で勝利して以来、保護貿易主義的な傾向を示し、経済・安全保障面で中国に対し厳しい姿勢を示した。一方で中国はそうした挑発に乗らず、2017年1月17日、スイスで開かれたダボス会議で習近平国家主席は、グローバル経済を擁護し、反グローバル化、保護主義を批判する講演を行った。まるで米中の役割が入替ったかのような内容だった。

中国と米国はグローバルな戦略的競争状態に陥っていない。現在、双方とも経済貿易上、重要な協力パートナーであり、対テロ、エネルギー、環境保護などで相互協力は非常に重要になってきている。

中米両国の軍関係でも新たな動きが出てきている。両軍は対話関係を維持しており、中米の安全保障のリスクは制御可能な段階に入っている。「衝突せず対抗せず」というのが共通の認識だ。

トランプ氏、クリントン氏、どちらの大統領候補者が当選しても、対中政策は強硬になると予想、オバマ氏を懐かしく思い出すだろうと思っていた。2人には違いがあった。クリントン氏当選の場合は米の対中政策は基本的には変わらないと予想。互いに相手をよく知っており、対応しやすいが、政治経験が豊富なだけにしたたかな相手になると見ていた。

トランプ大統領の場合は不確定要素が多く、内外の政策が変わると見ていた。学者の多くは、中米関係は複雑になると予想。ビジネスマンとして経験が豊富で自信家なので「取引(ディール)」すると見ていた。

中国の世論に様々な変化が発生している。トランプ陣営には無知で対中強硬な立場を取る側近がおり、軍事力を高め中国に対応していくと報告書に書かれ、中国側の警戒心が高まっていることは確かだ。

トランプ政権の対中政策は「不確定性」と「強硬」2つの言葉で表せる。米中首脳電話会見で「一つの中国」を守ると宣言した。多くのトランプの政策はまだ不確定要素が多く分からないが、中米関係の将来には「挑戦」と「チャンス」があり、より均衡の取れた関係になると予想する専門家もいる。

今、結論を下すのは時期尚早だ。長期にわたる政策評価をしなければならない。専門家の提言は、バランスのとれた政策を推進するべきだと主張している。当初の不確定要素が高かった段階に比べ、米国の基本的な枠組みに戻っていく。そして情勢の変化に応じて調整していくだろうと考えられる。米国の政策がトランプ氏1人で決まることはないと考える。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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