<G7伊勢志摩サミット開幕>世界経済減速への対応策打ち出せるか=GDP世界シェアは半分以下、“実権”はG20に移行

八牧浩行    2016年5月26日(木) 14時40分

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16日、日本が8年ぶりに議長となる主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が三重県志摩市内のホテルで2日間の日程で開幕した。減速する世界経済への対応策のほか、政治・外交問題を協議する。資料写真。

2016年4月16日、日本が8年ぶりに議長となる主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が三重県志摩市内のホテルで2日間の日程で開幕した。減速する世界経済への対応策のほか、政治・外交問題を協議する。同会議では7回のセッションが設置され、貿易、エネルギー、開発、女性の活躍、デジタルエコノミーの推進などがテーマとなる。27日午後に共同宣言を発表、安倍晋三首相が議長会見を行う。

世界経済は明らかに鈍化傾向にあり、国際通貨基金(IMF)の予測によると、2016年の世界の成長率は3.2%と10年の5%台から下落。G7先進国の大半が超金融緩和を続けているが、経済の潜在力が高まらず、ゼロ〜1%台に低迷、長期停滞局面にあるといっても過言ではない。けん引役の新興国経済もかつての勢いを失っているのが実情だ。

 

今回サミットを取り巻く経済環境は厳しさを増しており、リスクを見極める必要がある。6月23日の英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まれば、同国通貨のポンドが急落し、市場が大混乱しかねない。ドイツ、フランスなど欧州各国は中東からの移民流入やテロに苦慮している。米国では11月の大統領選挙に向け、異端の共和党候補・トランプ氏が勢いを増大している。先進各国で富裕層と低所得層の格差が拡大し、租税回避地(タックスヘイブン)の利用実態が明らかになった「パナマ文書」で、税の公正に疑問が投げかけられている。

◆「決裂」せず、「成果」を謳い上げる

もともとこのG7サミットはエコノミック(経済)サミットと呼ばれ、今回も「世界経済の持続的で力強い成長」が最大のテーマとなった。各国とも経済環境が異なり、安倍首相が切望した「財政出動での協調」も、ドイツや英国などが難色を示し、結束に乱れが生じている。G7サミットはシェルパ(首脳の補佐役を務める外務・財務官僚)の周到な準備により、成果を謳い上げるのが常で、「決裂」しない建前。共同宣言の文言などでもシェルパが調整する。

 

サミット会議は1975年に仏ランブイエで第1回が開催され、日、米、英、仏、西独、伊の6カ国でスタート。カナダを加えたG7が長らく世界経済を引っ張っていたが、最近は中国をはじめとする新興国の台頭で影響力が低下。経済問題は新興国の入った主要20カ国のG20が重みを増している。

G7の名目GDPシェアはピークの1980年代後半に70%近くあり、名実ともに世界経済をリードしていた。90年代〜2000年前半までは60%台を維持していたが、2008年のリーマン・ショックを経て、現在は45%程度に縮小。一方、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)のGDPシェアは1994年の7.3%から21.9%に上がった。14年の世界シェアは、中国だけで世界全体の約13%を占めた。

 

G7各国の高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)が高いのも大きな特徴。90年代に入り、高齢化のスピードが一気に速まり、英国、ドイツ、フランス、イタリアが軒並み15%を超えた。日本は2000年に17%を突破、2015年には25%を上回り、国民の4人に1人が高齢者という「超高齢化」時代に突入した。高齢化の進行に伴い若い労働力人口が減少、潜在成長率の低下から、先進各国は経済成長率の低迷に苦しんでいる。

 

一方、人口増加が続くBRICSは、若い労働力を背景に高度経済成長期に突入。高齢化率は依然として低い水準を保ち、2000年代に入っても中国の6%、ブラジル5%、インド4%と、世代別の人口構成比はG7と大きく異なる。高い経済成長を支える生産年齢人口も2020年代ごろまで拡大が続くとみられる。

アジア通貨危機後の1999年に開いたのがG20の財務相・中央銀行総裁会議。G7にロシア、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、トルコと欧州連合(EU)を加えた20カ国・地域の枠組みだ。リーマン・ショックを受けて2008年からは首脳会議も開いている。

◆「G7はサロンのようなもの」

日本はサミットを重要視し、メディアも大きく扱うが欧米は冷静だ。アジアの参加国は日本だけで、日本の首相が欧米首脳と肩を並べる数少ない会議だからだ。筆者は1978年の日本初の東京サミットを外務省詰めの記者として取材した。この時は第2次石油ショックで混乱した世界経済立て直し策が話し合われ、石油高騰抑制へ石油消費・輸入の数値目標を設定した。以来多くの同会議を取材してきたが、大騒ぎするのは日本だけである。

G7メンバー国のうち4カ国は欧州で、EU月例会議などで頻繁に会っており、フランスのティエリー・ダナ駐日大使は「G7はサロンのようなもの」と表現している。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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Record China主筆 八牧浩行

時事通信社で常務取締役編集局長を務め、ジャーナリストとしての活動歴は40年以上。
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